「介護が必要になってから」ではなく、「介護が必要になる前」に備える。ヤマダデンキとの協業商品を監修した理学療法士と担当者に聞く

2026-10-08
ツクイ×ヤマダデンキ予防型リフォームブランド「YELLONE HEART」

今回、ヤマダデンキとの協業によって誕生した予防型リフォームブランド「YELLONE HEART」。その第一弾商品となるバスリフォームパックの監修を担当したリレーションシップ推進本部の菊池さんとミライ想造部部長でもあり理学療法士の林さんに、開発に込めた思いやこだわりを聞きました。

「もっと早く環境を整えていれば」と感じる場面は少なくない

菊池さんの写真
リレーションシップ推進本部の担当者
菊池さん

ツクイとして多くの高齢者を支援するなかで、「身体機能が低下してから住環境を見直すケース」が非常に多いと感じています。

例えば、転倒を経験したことをきっかけに手すりを設置したり、浴室改修を検討したりする方は少なくありません。しかし、その時点ではすでに生活範囲が狭くなっていたり、活動量が低下していたりすることもあります。

また、認知機能が低下してから住環境を整える場合、新しい設備の機能や操作方法を覚えることに時間を要したり、習得そのものが難しくなったりすることがあります。そのため、せっかく浴室などを改修しても設備を十分に使いこなせず、本来期待される効果を発揮しにくくなる場合があります。

だからこそ今回の開発では、「介護が必要になった人向け」ではなく、「まだ元気なうちから将来に備える人向け」の発想を大切にしました。 

浴室は、生活動作が最も集中する場所

林さんの写真
ミライ想造部部長
林さん

住まいの中でも、私たちが特に注目したのは浴室です。
浴室では、浴槽をまたぐ、片脚で身体を支える、しゃがむ、立ち上がる、狭い空間で方向転換をするなど、さまざまな動作が連続して求められます。さらに床が濡れているため、転倒のリスクも高くなります。
介護現場でも、浴室での不安や事故をきっかけに「一人で入浴することが難しくなった」というケースも少なくありません。
そのため今回の商品では、安全性だけでなく、「できるだけ長く自分自身の力で入浴できること」を大切にしました。
 

数センチの違いが安心感を左右する

林さん

特にこだわったのが浴槽のまたぎやすさです。
若い頃には意識しないかもしれませんが、加齢によって股関節の動きや筋力が低下すると、浴槽をまたぐ動作は想像以上に負担とストレスになります。立ちながらまたぐことが難しくなったら座った状態でまたぐと思いますが、それでも骨盤や股関節の柔軟性が低下していると、後方や側方へバランスを崩しやすくなってしまいます。浴槽の縁の高さが数センチ違うだけでも、必要な脚の上がり方やバランスのとりやすさは変わります。今回の商品では、浴槽の縁に座りながらまたぎやすいように、浴槽の縁がわずかに低い設計になっています。そのような身体機能の変化も見据えながら、将来的な使いやすさまで考慮した設計にこだわりました。

浴槽内のストッパーの重要性

林さん

 浴槽の中では、お湯による浮力や浴槽底面の滑りやすさによって、身体が前方へずれることがあり、浴槽内での溺水につながる危険があります。特に、円背(背中がまるくなっている)姿勢の方ではさらに危険が高まります。
浴槽内にストッパーがあることで、足を当てて踏ん張りやすくなり、入浴中の姿勢を安定させることができ安心して浴槽につかりやすくなります。
この浴槽は手(浴槽の縁も握りやすい設計)と足の両方で身体を支えられる環境にすることで、浴槽内での安心感につながると考えています。

手すりは「付ける場所」が重要

林さん

もう一つ重視したのが手すりです。
実は手すりは、設置するだけで効果が得られるわけではありません。浴室の出入り、洗い場での立ち座り、浴槽をまたぐ動作、浴槽内での姿勢保持など、支えたい動作によって適切な位置や向きが異なります。
私たち理学療法士は普段からお客様の動きを観察しながら支援を行っています。その知見を生かし、住む人の身体状況や身長に応じた手すり設置をサポートできる仕組みを取り入れました。 

ツクイだから提供できる価値

菊池さん

今回の協業であらためて感じたのは、介護現場の知見には社会的に大きな価値があるということです。
私たちは日々、多くのお客様の生活や身体機能の変化に向き合っています。その経験から得られた知識を商品づくりに活かすことで、「介護が必要になってから対応する」のではなく、「介護を予防するための環境づくり」を提案できるようになりました。
介護サービスだけではなく、住まいづくりの領域でも、お客様の自立した生活を支えていく。それが今回の取り組みの大きな意義だと考えています。
介護のためのリフォームではなく、“これからも自分らしく暮らし続けるためのリフォーム”を目指しました。住環境を整えることは、将来の安心につながる大切な準備だと思っています。

 

<取材> 総務部広報課 山中