【防災の日】形だけの訓練でなく、実効性ある防災体制へ! 防火・防災訓練レポート【ツクイ本社】

2025-09-25

防災の日に考える。「備える力」を育てるために

9月1日の「防災の日」に合わせて、2025年9月8日、ツクイ本社(神奈川県)にて、オフィスタワー全体を対象とした防火・防災訓練が実施されました。防災の日は、1923年の関東大震災を教訓に制定されたもので、災害への備えを見直す大切な機会です。

今回の訓練では、災害時に従業員一人ひとりが冷静に行動できるようになることを目的に、以下の5つの力を養うことが重視されました。災害はいつ、どこで起きるかわかりません。だからこそ、日常の中で「備える力」を育てることが大切です。

  1. 館内放送を正しく聞き、内容を把握したうえで行動する力
  2. 初動対応を理解し、身につける力
  3. 安否確認の体制を整える力
  4. 避難経路をたどり、安全に脱出する力
  5. 消火器を使い、初期消火をする力

自衛消防隊の役割を見直し、「初動対応力」を高める

今回の訓練では、災害時に必要な「初動対応力」を高めることが大きな目的のひとつでした。
その中心となるのが、自衛消防隊の体制見直しです。自衛消防隊は、消防計画に基づいて編成される社内組織で、「通報連絡係」「初期消火係」「避難誘導係」「応急救護係」の4つの係で構成されています。

防火・防災訓練は、総務部総務課が中心となって運営されました。
総務課の朝倉さんは、今回の訓練にあたり「いざ災害が発生したとき、自衛消防隊はいったい何をすればよいのか。その具体的な対応が不明確なままでは、初動が遅れてしまう可能性があります。これまでの自衛消防隊は人にひもづいた組織でしたが、災害時にその人が本社にいなければ対応ができないという課題がありました。そこで、2024年度からは部署ごとの選任に変更し、災害時に確実に動ける体制づくりを進めています。」と語ります。この変更により、災害発生時に「誰が動くか」ではなく、「どの部署が動くか」という視点で初動対応ができるようになりました。また、火災時の係ごとの役割にとどまらず、災害時全般の対応を担う組織として、自衛消防隊の位置づけを再定義。総務課だけでは対応しきれない場面を想定し、社内全体で協力し合える体制づくりを目指しています。

朝倉さんは、体制の見直しに加え、訓練の進め方にも工夫を凝らしたと話します。
「今回は、初動対応に焦点を当て、自衛消防隊の選任部署の皆さんと一緒に考えることから始めました。4つの係に共通して必要となる初動対応力を高めることが、災害時の安全確保につながると考えています。」
このような取り組みは、形だけの防災体制から脱却し、実際に「動ける組織」へと進化するための第一歩です。

実際に動くことで見えてくる課題と気づき

訓練は3つのステップで進行しました。

① 緊急地震速報の受信訓練

館内放送「訓練、地震発生」に合わせて、出勤者全員が机の下に身を隠すなどの安全確保を実施。
その後、避難経路確保のため、各部署近くのドアを開放しました。

消防訓練1
机の下に身を隠し安全を確保
避難経路確保のため、ドアを開放

 

② 点呼訓練

今回新たに導入された点呼訓練では、自衛消防隊選任部署のメンバーが各部署に声かけを行い、出勤者の所在を確認。結果は「点呼用紙」に記録され、エレベーターホールに集合する流れが取られました。

朝倉さんは導入の背景について「本社が罹災(りさい)した場合、出社している従業員の所在確認のフローが明確でなく、初動対応が足りていないと感じていました。安否確認システムは便利ですが、勤務状況に関係なく通知されるため、実際に本社にいる人の確認は別途必要です。そこで、出社人数を母数として部署ごとに点呼をすることが必要だと考えました。」と語ります。

また、点呼訓練にあたっては社内調整にも工夫が必要だったと振り返ります。
「理想は人にひもづかない訓練ですが、初回ということもあり、各部署から『点呼報告者』を事前に選任いただきました。まずはスムーズな実施を優先しました。」訓練の成果については、「全部署の点呼結果を把握でき、目的を達成できました。」と話しています。

消防訓練3
点呼訓練の様子
消防訓練4
点呼用紙に記録中

③ 避難・初期消火訓練

自衛消防隊は、4F屋上庭園への避難と、水消火器を使った初期消火訓練、煙体験を実施しました。避難時には非常階段を使用し、ヘルメットを着用。ヒールやサンダルでの避難は避け、私語やスマートフォンの操作も慎むなど、実際の災害を想定した行動が求められました。

水消火器訓練では、火の的に向かって放水する体験を通じて、消火器の扱い方を学びました。
煙体験では、甘い香りのする煙を使い、煙を吸い込んだことを認識できる仕組みが導入されていました。参加者は、低い姿勢でハンカチや衣服で口元を覆いながら進むという基本動作を身につけることが重視されました。参加者からは、「避難場所や避難経路を訓練しておくことで、冷静に行動できる」「日々の訓練が大切だとあらためて感じた」といった声が寄せられました。

水消火器を使った初期消火訓練
水消火器を使った初期消火訓練
煙体験
煙体験

「日常の中の防災」を全国へ

朝倉さんは今後の展望について「訓練とはいえ、当日は自分自身が焦ってしまった場面もありました。今後は、実際の災害時を想定して、落ち着いて行動することを心がけたいです。また、自衛消防隊の選任部署の皆さまと振り返りの打ち合わせを行い、改善点を洗い出していきたいと思っています。さらに、本社に在籍するグループ会社間との連携も強化していきたいです。」と語ります。

総務部の部長である小寺さんからは、全国の事業所に向けて次のようなメッセージが寄せられました。

災害時にまず大切なのは、自分自身の命を守ること。そして、従業員やお客様の安全を守るためにも、落ち着いて行動できる力が欠かせません。訓練を重ねることで、いざという時にパニックを抑え、状況に応じた判断ができるようになります。避難経路や方法を繰り返し確認しておけば、災害時に自然と正しい行動を取れるようになりますし、消火器や消火栓の使い方を知っておくことも、火災の拡大を防ぐうえで重要です。災害後の事業継続を見据えた準備や、地域・行政との連携も欠かせません。
自分で備える『自助』、周囲と助け合う『共助』、行政の支援を受ける『公助』、この3つの力を高めることが、災害に強い組織づくりにつながります。訓練を通じて、避難計画や備蓄品、連絡体制などの課題が見えてくることもあります。そうした気づきを一つずつ改善していくことが、日頃の備えにつながるのではないでしょうか。消防法でも訓練の実施は義務付けられていますが、それ以上に、『命を守るための行動』として、各事業所でもぜひ前向きに取り組んでいただけたらと思います。


<取材>
総務部広報課 吉澤