【地域共生】相談ブースで広がる訪問介護の輪/地域連携の新しい形【ツクイ世田谷明大前】
気軽に立ち寄れる「介護相談ブース」
2025年6月26日(木)、東京都世田谷区にある松原アーバンクリニックで開かれた地域交流イベント「まつばらんど」は、地域のご家族連れや福祉関係者など、さまざまな方が気軽に立ち寄るにぎやかな場となりました。そして、訪問介護の事業所であるツクイ世田谷明大前(東京都)もこのイベントに参加し、地域とのつながりを深める一日になりました。無農薬の野菜販売に、外ではキッチンカーのカレー。イベント会場は笑顔と活気に満ちあふれ「何の集まりだろう」と思わず足を止めて立ち寄る方の姿も見受けられました。
さらに、ツクイ世田谷明大前が近隣の介護事業者とともに設けた介護相談ブースでは「家族に介護サービスを利用してもらったほうがいいのか迷っている」「最近体調が不安定で……」など「ちょっと聞いてみたい」という声にスタッフが丁寧に応え、普段は言い出しにくい悩みも自然と話せる、温かな空間が生まれていました。
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「訪問介護が知られていない」という壁からのスタート
この介護相談ブース、開催のきっかけは「地域に訪問介護の存在が十分に知られていない」という現実でした。ツクイ世田谷明大前は求人イベントや説明会に多数参加。しかし、訪問介護のブースにはなかなか人が寄らない……という状況に、スタッフはショックを受けたそうです。
当時ツクイ世田谷明大前の事業管理者を務めていて、介護相談ブースを発案した清水さん(現・ツクイ大田久が原マネジャー)は「送迎車が巡るデイサービスに比べ、訪問介護は地域での認知度の低さが課題でした。事業所があっても、地域の方にその存在すら知られていない。このままではサービスが届かない。そう強く感じたことが、今回の取り組みの原点でした」と語ります。
訪問介護だからできる「気軽に相談できる場」を模索して
この課題にどう取り組むか知恵を絞り、その中で浮かんだのが「地域に開かれた相談ブース」でした。
認知症カフェの見学や地域のクリーンアップ活動を通じて近隣の介護事業者と交流を深めるうちに、日々の生活に寄り添う訪問介護だからこそできることをしたいという思いが募っていきました。そこで、場所探しのため地域包括支援センターに相談したところ、松原アーバンクリニックが関心を持っているとの情報が寄せられ、急きょ顔合わせが決定。同クリニックは「訪問診療といえばここ」と言われるほど地域で信頼を集めており、もともと医療相談を定期開催していた中で、介護の相談もできる場にしたいと考えていた背景があったそうです。
こうして両者の思いが重なり、医療と介護がタッグを組み「安心して集える場所」が実現しました。
現在ツクイ世田谷明大前で事業管理者を務める地代所(じだいしょ)さんは、「同じような悩みを抱えている事業所はきっと多いと思います。私たちも、まずはできることからと地道な活動を重ねてきました。そうした中で、地域の方々の目に留まるような活動に参加することで『何をしているんだろう?』と興味を持って声をかけてくださる方もいらっしゃいます。そうした関わりが訪問介護を知っていただくきっかけとなり、認知度の向上にもつながっていることを実感しています。さらに医療機関や近隣の介護事業者と一緒に取り組むことで、より地域に貢献できると感じています」と語ります。
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一方、松原アーバンクリニックのご担当者も「高齢の方が生活を続けるうえでは、医療だけでなく介護を必要とされる場面は多くあります。そのため、医療と介護は親和性が高いと、日々の業務の中で強く感じてきました。私たちも、医療の『外側』で何ができるのかを模索する中で、介護との新たな連携の形が少しずつ見えてきたように感じています」と話してくださいました。
地域に「訪問介護」という選択肢を
今回の介護相談ブースは「相談の場」にとどまらず、地域の方々に訪問介護という存在を知っていただく貴重な「入り口」になりました。 「訪問介護」と聞いても具体的なイメージが湧かず、身近に感じにくいという声は少なくありません。しかし、実際にスタッフと顔を合わせ、気軽に話ができる場があることで、「いつか必要になるかもしれない」「いざというとき、相談できる人がいる」といった安心感につながります。
清水さんはこう語ります。 「今回、近隣の医療・介護事業者と協働し、こうした相談ブースを立ち上げたことで、訪問介護の新たな形をつくることができました。私たちだけでは認知度を高めるのが難しくても、地域に出て多くの方と思いを共有することで、業界全体として社会課題の解決に近づけるのではないかと感じています。日々の業務に追われ、実行に移すのが難しいこともありますが、視点を変えて一歩踏み出してみると、思いがけないところから新しいご縁が生まれることもあります。今後も、地域とつながりながら、訪問介護の可能性を広げる挑戦を続けていきたいと思います」
ツクイが目指している「年齢を重ねても自分らしく生きられる地域づくり」は、このような出会いや気付きの積み重ねから始まるのかもしれません。 介護や医療がもっと自然な形で暮らしに根づいていく。今回の取り組みは、そんな未来への一歩を感じさせてくれる場でした。
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<取材>
総務部広報課 登山